介護の現場で仕事をするなら、介護福祉士を目指したほうがいいと言われたけど、実際どのような資格なんですか?
介護の現場には、似たような名前の資格がいくつかあるので、わかりにくいですよね。
ここでは、「介護福祉士」という資格について、詳しく解説します!
「介護福祉士」は、介護に関する一定の知識や技能があることを証明する国家資格です。
言葉の使い分けが難しいところもあり、正しく理解できていない人もいるようです。
「介護福祉士」という資格がどの法律に、どのように位置づけられている資格なのか、まずは確認しましょう。
- 「介護福祉士」の根拠となる法律
- 介護福祉士の定義
- 介護福祉士の義務と罰則
介護福祉士と介護士ってどう違う?
介護で仕事をしている人を表す表現として「介護士」だったり、「介護職」だったり、「介護福祉士」だったり…。
いったい何がどう違うの?と感じる方もいるのではないでしょうか。
「介護士」というのは、介護をする仕事についている人を表す総称だと思ってください。
資格の有無に関わらず、介護の仕事をしている人。
「介護職」「介護職員」「介護スタッフ」も同様です。
仕事という意味では「介護職」という表現のほうが、より意味合いが正しい使い方と言えます。
一方、「介護福祉士」は、冒頭でも触れたように、介護に関する一定の知識や技能を証明する国家資格です。
この後詳しく解説していきますが、「介護福祉士」は国家資格に合格した人だけが名乗れます。
仕事内容や働いている場所に関わらず、「介護福祉士」として登録をしていれば、「介護福祉士」と言うことができます。
介護福祉士とは
介護福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」を根拠とする介護に関する日本で唯一の国家資格です。
「介護福祉士法」と聞くこともあるかもしれませんが、正確には「社会福祉士及び介護福祉士法」という法律の名前です。
この法律では、社会福祉士と介護福祉士の資格に関することが規定されています。
介護福祉士が誕生したのは…
「社会福祉士及び介護福祉士法」が制定されたのが、1987年5月26日。
第1回の国家試験は、1989年(平成元年)に実施されました。
初回受験者は、11,973人。合格率はたったの23.2%。
2,782名の介護福祉士が誕生しました。
介護福祉士の「定義」
まずは、「介護福祉士」の定義を見ていきましょう。
定義については、「社会福祉士及び介護福祉士法」第2条に記されています。
(定義)
第二条 この法律において「社会福祉士」とは、第二十八条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という。)を業とする者をいう。2 この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰かくたん吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
介護福祉士の定義のポイントは、以下の3つです。
介護福祉士の定義(ポイント)
- 介護福祉士は、介護福祉士名簿へ登録して、初めて介護福祉士になれる。(合格をしただけは、介護福祉士と名乗ることはできない)
- 介護福祉士は名称独占の資格。資格を持っている人だけが、名称を名乗れる資格です。
- 業務の内容は、心身の状況に応じた介護と介護に関する指導。
介護福祉士になれない人はどんな人?
上の条件を満たせば、介護福祉士になれますが、ではこの資格は誰もがなれる資格なのでしょうか?
介護福祉士には欠格事由があります。
欠格事由とは、法律に求められている資格に欠けている事柄です。
つまり、欠格事由にあてはまる人は、介護福祉士になれません。
欠格事由については、「社会福祉士及び介護福祉士法」第3条に規定されています。
(欠格事由)
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、社会福祉士又は介護福祉士となることができない。
一 心身の故障により社会福祉士又は介護福祉士の業務を適正に行うことができない者
として厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他社会福祉又は保健医療に関する法律の規定であつて政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
四 第三十二条第一項第二号又は第二項(これらの規定を第四十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
つまり、以下のような人が介護福祉士になることができません。
介護福祉士になれない人
- 心身の故障などにより介護福祉士の業務を適正に行うことができない人
- 禁錮以上の刑または社会福祉士及び介護福祉士法で罰金刑以上の刑を受け、執行から2年を経過しない人
- 介護福祉士の登録を取り消され、その取り消しの日から2年を経過しない人
介護福祉士は更新制の資格ではありませんが、欠格事由に該当した場合は、資格取得後も取り消されてしまいます。
せっかく取得した資格が取り消されないように、しっかりと覚えておきましょう。
介護福祉士の義務と罰則について
次に、介護福祉士の「義務」と「罰則」についてもしっかりと押さえておきましょう。
義務と罰則については、「介護福祉士及び介護福祉士法」第4章、第5章に規定されています。
介護福祉士の「義務」は大きく6つです。
介護福祉士の義務は大きく6つ
- 誠実義務(第44条の2)
- 信用失墜行為の禁止(第45条)
- 秘密保持義務(第46条)
- 連携(第47条)
- 資質向上の責務(第47条の2)
- 名称使用の制限(第48条の2)
この義務に対して、罰則が規定されています。
あわせて、解説していきます。
①誠実義務(第44条の2)
第四十四条の二 社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
介護福祉士は、個人の尊厳を保持し、自立した日常生活が送れるよう、常に利用者の立場に立って誠実に業務を行わなければいけないということです。
②信用失墜行為の禁止(第45条)
第四十五条 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
介護福祉士は、常に介護福祉士の信用を気づけるようなことをしてはいけないということです。
この「義務」には、罰則があります。
③秘密保持義務(第46条)
第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
介護福祉士は、正当な理由がなく、業務で知り得た秘密を漏らしてはいけないということです。これについては、介護福祉士でなくなった後も同じです。
この義務には罰則があります。
④連携(第47条)
第四十七条
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
2 介護福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、認知症(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五条の二第一項に規定する認知症をいう。)であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
介護福祉士は、認知症など利用者の心身状況等に応じて、福祉サービス関係者等と連携をとらなければならないということです。
これは、ここ数年とても重要視されています。
自分の勤めている事業所の関係者だけでなく、様々な専門家がそれぞれの視点で意見を出し合い利用者のサービスを行うことが義務として規定されています。
⑤資質向上の責務(第47条の2)
第四十七条の二 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
介護福祉士は、資格取得後も介護を取り巻く環境の変化に対応するため、常に知識及び技術の向上に努めなければいけません。
資格は更新制ではありませんので、資格取得後は自分の中で知識や技術を向上できるよう常に勉強する姿勢が必要です。
法律の改定などもしっかり対応できるようにしなければいけません。
⑥名称使用の制限(第48条の2)
第四十八条
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
2 介護福祉士でない者は、介護福祉士という名称を使用してはならない。
介護福祉士の資格を取得していない人は、「介護福祉士」と名乗ってはいけません。
これを「名称独占」の資格といいます。
比較される言葉に、「業務独占」という資格があります。
医師や看護師などのように、その資格をもっていないと、その業務ができない資格です。
介護の仕事は介護福祉士の資格をもっていなくてもできますが、「介護福祉士」とは名乗ってはいけないということです。
この義務には罰則があります。
介護福祉士が行える一部「医療的ケア」について
「社会福祉士及び介護福祉士法」は2007年(平成19年)、2011年(平成23年)に一部が改正されています。
2011年(平成23年)の改正では、それまで介護福祉士はできなった喀痰吸引や経管栄養などを、一定の研修を受けた人に限り医師の指示の下で行えるようになりました。(2012年4月施行)
(保健師助産師看護師法との関係)
・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号) (mhlw.go.jp)
第四十八条の二 介護福祉士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とすることができる。
「保健師助産師看護師法」の記載も確認してみましょう。
第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
第三十二条 准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
・保健師助産師看護師法(◆昭和23年07月30日法律第203号) (mhlw.go.jp)
※第五条、第六条に規定する業=傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うこと
これらをまとめると、介護福祉士が行える医療行為は以下の行為です。
社会福祉士および介護福祉士法で実施可能な医療行為
喀痰吸引その他の日常生活を営むのに必要な行為で、医師の指示の下に行われる以下の行為。
喀痰吸引:口腔内の喀痰吸引、鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内部の喀痰吸引
経管栄養:胃ろう・腸ろう、鼻腔経管栄養
「社会福祉士及び介護福祉士」法では上記の行為が認められていますが、「介護福祉士」を取得すべての人が実施できるわけではありません。
喀痰吸引等を実施できる介護職員は、次のように限定されています。
喀痰吸引等を実施できる介護職員
- 喀痰吸引等を行うのに必要な知識及び技能を修得するための研修(喀痰吸引等研修)を修了し、と都道府県知事から「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けた人
- 基本研修または医療的ケアを修了している介護福祉士で、登録喀痰吸引等事業者または登録研修機関で実地研修を修了し、実施できる喀痰吸引等が付記された介護福祉士登録証の交付を受けた人
また、認定証には3つの種類があり、それぞれできる範囲が決まっています。
第1号 | 不特定多数の利用者に対して、すべての喀痰吸引等の行為ができる。 |
第2号 | 不特定多数の利用者に対して、喀痰吸引等の行為のうち実地研修を修了した特定の行為のみできる。 |
第3号 | 特定の者が必要とする行為のみできる。 |
その他、喀痰吸引等の業務を行う場合は、事業所ごとに都道府県知事に登録をする必要があります。
まとめ
今回は、「介護福祉士」の資格については、法的にどのように定められているか解説しました。
このページの範囲は、介護福祉士の試験で必ずといっていいほど出題されます。
資格取得を検討されている方は、ぜひこの機会に知識として覚えてしまいましょう。