筆記試験は、13科目もあると聞きました。
そんなに多いとどこから手をつけていいのかわかりません…
確かに範囲が広いようにかんじますね。
それぞれの科目によって出題数も異なるので、内容や出題傾向について詳しく解説していきますね!
介護福祉士の筆記試験はどんな内容で出題されるのか。
13科目というと範囲も広いように感じ、どの科目から勉強すればいいのか悩む人も多いと思います。
効率的な勉強をするために、あらかじめ内容や出題傾向を確認しておきましょう。
- 筆記試験13科目の内容
- 出題傾向や試験対策
試験のしくみや難易度については、以下の記事で説明していますので、気になる方は先に読んでください!
介護福祉士筆記試験の科目は12科目+総合問題
筆記試験の科目は、13科目と言われていますが、正確にいうと12科目+総合問題です。
社会福祉・試験振興センターのホームページにに毎年出題基準が公表されますが、出題基準の基本的性格として、以下のように記されています。
ちなみに、出題基準とは試験委員が試験問題(課題)を作成するために用いる基準のこと。
この基準をもとに、各試験委員が問題を作成します。
出題基準の基本的性格
第35回試験の実施にあたり、以下のように出題基準が公表されています。
出題基準の基本的性格
ア.出題基準は、あくまでも標準的な出題範囲の例示であって、出題範囲を厳密に限定するものではなく、また、作問方法や表現等を拘束するものではない。
イ.介護とは、単に技術的な営みではなく、人間的・社会的な営みであり、総合的・多面的に理解されるべきものであることから、4領域(人間と社会、介護、こころとからだのしくみ、医療的ケア)を横断する総合問題を出題する。
ウ.出題基準公表後の法改正による制度の重大な変更等、出題基準にない事項であっても、介護福祉士として習得すべき事項については、出題することができる。
エ.関係学会等で学説として定まっていないものや、論議が分かれているものについては、その旨を配慮した出題を行なう。
イ.に書かれているように、総合問題は、12科目(4領域)を横断するかたちで出題されます。
つまり、12科目をしっかりとおさえる必要があるということです。
筆記試験の問題形式
介護福祉士筆記試験の出題形式は、五肢択一を基本とるす多肢選択形式で、問題に図表等が使用されることになっています。
多肢選択式とされていますが、五肢択一がほとんどです。
つまり、5つの選択肢のなかから答えを選ぶ問題です。
自分で文章を書くような記述式の問題ではありません。
また、解答方法は、マークシート方式です。
記述がない分時間把握がしやすいですが、マークのミスなどが出やすいというデメリットもあります。
確実に点数をとるためにも、注意したいですね。
試験12科目と出題基準
次に、試験科目をそれぞれ見ていきます。
第35回の出題基準として公表されている大・中項目もあわせて確認しましょう。
中項目は、試験の出題内容となる事項となっているので、試験問題はこの範囲から出題されます。
しっかりおさえましょう。
領域:人間と社会(出題予定数:18問)
1.人間の尊厳と自立
大項目 | 中項目 |
人間関係の形成とコミュニケーションの基礎 |
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自立の概念 |
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人間の尊厳や人権擁護・福祉の理念など、介護に携わる人(介護職)として介護サービスを提供するために必要な理念や権利、利用者の尊厳など考え方や概念的を問う問題が出題されます。
福祉の概念や福祉に影響を与えた人物・著書など、正しい組み合わせを選択する問題や、事例などから介護職としての倫理観を問う問題なども出題されています。
一般常識で答えられる問題も多く、難易度は低め。
確実に点をとりたい科目です。
2.人間関係とコミュニケーション
大項目 | 中項目 |
人間関係の形成とコミュニケーションの基礎 |
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チームマネジメント |
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コミュニケーションの基本となる考え方や、人間関係の構築のベースとなる問題が出題されます。
最近では、「多職種連携」「チームケア」なども重要視されてきていますので、対利用者、対ご家族だけでなく、他職種といった幅広い人とのコミュニケーションというとらえ方をして対策しましょう。
難しそうに思えるかもしれませんが、介護職として大切な「受容・共感・傾聴」といった基本姿勢で問題に向き合えば、答えられる問題が多いです。
最近は、介護福祉士のあり方像として、中核人材として位置づけようという流れもありますので、人材育成やマネジメントの考え方も勉強するといいでしょう。
3.社会の理解
大項目 | 中項目 |
社会と生活のしくみ |
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地域共生社会の実現に向けた制度や施策 |
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社会保障制度 |
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高齢者福祉と介護保険制度 |
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障害者福祉と障害者保健福祉制度 |
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介護実践に関する諸制度 |
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社会福祉制度全般に関する問題が出されます。
介護保険だけでなく、障害分野、法令や専門用語なども多く出されるため、範囲が広く難しく感じますが、一般常識で答えられる問題も多い科目です。
介護は社会課題(問題)から生まれたということが色濃くわかるのもこの科目ではないでしょうか。
試験対策という考え方でなく、ニュースなど世の中の流れに注視することで解ける問題もあります。
ただし、制度の移り変わりも多くある分野でもあります。
過去問や古いテキストなどを使用する際は、注意が必要です。
領域:介護(出題予定数:50問)
4.介護の基本
大項目 | 中項目 |
介護福祉の基本となる理念 |
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介護福祉士の役割と機能 |
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介護福祉士の倫理 |
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自立に向けた介護 |
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介護を必要とする人の理解 |
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介護を必要とする人の生活を支えるしくみ |
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協働する多職種の役割と機能 |
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介護における安全の確保とリスクマネジメント |
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介護従事者の安全 |
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ここでは、介護職として介護を行う上で必要な法令や倫理観、介護福祉士の仕事を理解する問題が出題されます。
介護福祉士の基本理念や役割、倫理観はもちろん、自立支援の考え方、安全対策等リスクマネジメントまで範囲は広いです。
特に、介護福祉士の根拠でもある「社会福祉士及び介護福祉士法」に関する問題はほぼ毎年出題されています。
確実に点数をとれるように、しっかり覚えておきましょう。
また最近では利用者の安全対策だけでなく、介護職(介護従事者)を守るという視点での問題も出題されています。
介護職の健康管理に関する知識もつけておきたいですね。
5.コミュニケーション技術
大項目 | 中項目 |
介護を必要とする人とのコミュニケーション |
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介護場面における家族とのコミュニケーション |
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障害の特性に応じたコミュニケーション |
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介護におけるチームのコミュニケーション |
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ここでは、「2.人間関係とコミュニケーション」の範囲と異なり、実際に現場で必要となるコミュニケーションの方法論について出題されます。
利用者の特性に応じたコミュニケーション方法になるので、障害や疾病、対家族への対応など様々な知識が求められます。
事例を読んでの質問もあるので、事例の中から何を求められているのか読み解く必要もあります。
各障害、疾病別の特徴やその対応をおさえておけば、現場での仕事に近い範囲ですので、難易度は高くはありません。
しっかりと点数を積み上げたい分野です。
6.生活支援技術
大項目 | 中項目 |
生活支援の理解 |
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自立に向けた居住環境の整備 |
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自立に向けた移動の介護 |
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自立に向けた身じたくの介護 |
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自立に向けた食事の介護 |
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自立に向けた入浴・清潔保持の介護 |
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自立に向けた排泄の介護 |
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自立に向けた家事の介護 |
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休息・睡眠の介護 |
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人生の最終段階における介護 |
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福祉用具の意義と活用 |
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この試験の中で、最も出題数が多い科目です。(第34回試験参考)
介護職として実施している介護技術についての内容となるため、介護の基本技術をしっかりとおさえて普段の仕事ができていれば、難易度は高くありません。
在宅介護で求められる知識(家事、用具など)を問う問題も多いことから、普段施設で仕事をしている人は、意識して知識をつけておきましょう。
最近では、終末期のケアや介護ロボットなどの出題もされるようになっています。
自分が使ったことがない福祉用具も導入の目的や効果などおさえておきましょう。
大項目からも読めるように、ポイントは「自立に向けた生活支援」です。
利用者の自立を支援する基本技術を意識して、日ごろから仕事をするように心がけましょう。
7.介護過程
大項目 | 中項目 |
介護過程の意義と基礎的理解 |
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介護過程とチームアプローチ |
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介護過程の展開の理解 |
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利用者を援助する過程の考え方について出題される科目です。
介護過程の目的や計画立案、実施、評価の一通りの必要性が理解できていれば解ける問題です。
他職種との連携の中で介護職がどのように利用者と関わるかといった問題も出題されます。
事例を読んで答える問題もあるので、事例の中から何を求められているのか読み解く必要もあります。
領域:こころとからだのしくみ(出題予定数:40問)
8.こころとからだのしくみ
大項目 | 中項目 |
こころとからだのしくみⅠ ア.こころのしくみの理解 |
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イ.からだのしくみの理解 |
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こころとからだのしくみⅡ ア.移動に関連したこころとからだのしくみ |
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イ.身じたくに関連したこころとからだのしくみ |
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ウ.食事に関連したこころとからだのしくみ |
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エ.入浴・清潔保持に関連したこころとからだのしくみ |
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オ.排泄に関連したこころとからだのしくみ |
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カ.休息・睡眠に関連したこころとからだのしくみ |
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キ.人生の最終段階のケアに関連したこころとからだのしくみ |
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利用者を理解する上で大切なからだのしくみ、疾病やその原因など専門的な知識を問われる科目です。
普段行っている介護を医療的部分からも理論付けて実施できていますか?
症状の原因や対応、観察のポイントなど知識としてしっかり身につけましょう。
利用者の疾病の原因や、そこからどのような介護を行うべきか、どのようななところに注意すべきか日頃から意識することが一番の試験対策です。
9.発達と老化の理解
大項目 | 中項目 |
人間の成長と発達の基礎的理解 |
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老化に伴うこころとからだの変化と生活 |
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子どもから高齢者まで、介護の対象となる人の発達段階やその段階ごとの特徴が問われる科目です。
現場で覚える知識は少ないため、試験対策として勉強をする科目でもあります。
普段仕事をしている対象の段階はイメージしやすいかもしれませんが、それ以外の発達段階は知識として覚える必要があります。
発達段階は提唱者の名前・考え方はもちろん、発達段階の区分も少しずつ異なったりするため、混乱しやすい部分です。
また、老化による心身の変化や特徴がどのように生活へ影響を与えるかなども整理をしておきましょう。
10.認知症の理解
大項目 | 中項目 |
認知症を取り巻く状況 |
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認知症の医学的・心理的側面の基礎的理解 |
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認知症に伴う生活への影響と認知症ケア |
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連携と協働 |
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家族への支援 |
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1つの科目として分けるほど、重要視されているのが「認知症」です。
認知症の医学的基礎的理解はもちろん、認知症の歴史や課題から生まれた制度など範囲は広い科目です。
認知症の人を社会でどのようにサポートしていくか、社会的サポートもしっかり学ぶ必要があります。
脳の構造や機能など覚えることが多いため、難易度は高いですが、問題数も多いのでしっかり点数につなげられるように勉強しましょう。
11.障害の理解
大項目 | 中項目 |
障害の基礎的理解 |
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障害の医学的・心理的側面の基礎的理解 |
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障害のある人の生活と障害の特性に応じた支援 |
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連携と協働 |
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家族への支援 |
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障害に関する幅広い出題がされるのがこの科目です。
障害の法的定義、疾病や法律、障害の分類など覚える知識が多いです。
関連する法律が多く、制度の移り変わりも多いため、整理しながら学ぶ必要があります。
また障害者の社会参加が重要とされる中で、家族支援だけでなく、関係する機関や専門職との連携も大切なので、しっかり確認をしておきましょう。
領域:医療的ケア(出題予定数:5問)
12.医療的ケア
大項目 | 中項目 |
医療的ケア実施の基礎 |
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喀痰吸引(基礎的知識・実施手順) |
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経管栄養(基礎的知識・実施手順) |
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利用者の重度化に伴い、介護職も一部医療的ケアを行えるようになりました。それに伴い、2017年より導入された科目です。
実施できるようなった「喀痰吸引」「経管栄養」に関する医学的知識や備品の管理が中心に出題されます。
また、医療的ケアが法律でどのように位置づけられているのかもあわせておさえておきましょう。
範囲は決して広くありません。
過去問を中心に繰り返し、確実な知識をつけてください。
総合問題(出題予定数:12問)
総合問題は冒頭でも触れたように、12科目(4領域)を横断するかたちで出題されます。
1つの事例に対し、3題ずつ出題されます。
事例を読んで回答する問題なので、横断的な知識を応用しなければいけないため、難易度は高いです。
過去5年の事例を見てみても、対象者の設定も10代~80代までと幅広く、疾病も様々です。
サービス名、専門用語などわからないと解けない問題もあります。
総合問題の対策をするというよりは、各科目で確実に知識をつけるように勉強してください。
まとめ
ここでは、筆記試験の科目ごとの内容や出題傾向について解説しました。
自分が働いている職場や仕事内容によっても、得意・不得意な科目があるかと思います。
普段の仕事で試験対策に結び付けられそうなところは、積極的に現場で学ぶのがおすすめです。
科目ごとにメリハリをつけて、試験対策をしましょう。
難易度が低い科目は、確実に点数を積み上げられるようにできるといいですね。
社会福祉振興・試験センターのホームページには、出題基準について、小項目まで公表されています。
小項目は、中項目に関する事項をわかり易くするために例示した事項です。
問題のイメージをつけたい方は、一度確認してみてください。