介護の資格って、似たような名前がいっぱいあってよくわかりません。
いったい、何の資格を取ると自分にプラスになるんでしょうか?
高齢化が進む中で、制度が何度も見直しをされています。
ここでは、介護をこれから始めたいという方におすすめしたい資格を紹介します。
介護をこれから始めたいという方や、キャリアを考える中で最初に取得しておきたい資格に「介護職員初任者研修」という資格があります。
計画的に取得をしておくと、自分のキャリアアップにつながり、仕事の可能性も広がる資格です。
- 介護職員初任者研修の資格について
- 資格の受講方法と難易度
- 取得するメリットと資格取得でできること
介護職員初任者研修とは
「介護職員初任者研修」とは、介護の仕事をする上で、最低限の知識・技術や考え方などを身につけることができる基本的な研修です。
介護の仕事をする上での入門的な資格となります。
研修時間数は130時間。
訪問、在宅、施設など働く場所を問わず、介護を使用する人を対象にしていますので、介護の仕事をする上で必要な知識全般を学ぶことができます。
最低限の知識・技術とあるように、講義+実技演習がセットになっています。
介護の仕事は無資格(※1:一部は資格が必要)でも始めることができますが、人材が限られている中で、ゼロから教えることも難しくなっているのも事実。
この研修修了者を歓迎する施設も少なくありません。
介護職員初任者研修の導入の経緯(背景)
では、なぜこの研修は導入されたのでしょうか?
介護職員初任者研修は、2013年4月1日からスタートした資格です。
2011年1月に取りまとめられた「今後の介護人材養成の在り方に関する検討会」報告書において、今後の介護人材のキャリアパスを簡素でわかりやすいものにし、生涯働き続けることができる展望を持てるようにする必要があると提言されたことから始まります。
それまで、介護の資格は、ホームヘルパー2級・1級、介護職員基礎研修修了者など養成体系が複雑でした。
それを、「簡素でわかりやすいキャリアパス」にまとめたのが、今後の介護人材のキャリアパスです。
上の図にもあるように、今後のキャリはパスは「初任者研修修了者→介護福祉士→認定介護福祉士」を基本とするとしています。
それぞれのレベルは次のようにイメージされています。
認定介護福祉士 |
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介護福祉士 |
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初任者研修修了者 |
|
このように、介護職員初任者研修修了者は介護の仕事をする上で、スタートとなる位置づけの研修です。
この研修から、介護福祉士もしくはその先というように、常にキャリアを積んで長期的に介護の分野で働く人を育成していきたいというのが国の考えです。
介護職員初任者研修の内容は?研修科目と研修時間数
では、実際に介護職員初任者研修ではどんなことを学ぶのでしょうか。
細かく見ていきましょう。
介護職員初任者研修の概要
目的
介護職員初任者研修は、介護に携わる人が業務をする上で最低限の知識・技術とそれを実践する際の考え方のプロセスを身につけ、基本的な介護業務をおこなうことができるようにすることを目的としている研修です。
研修を通した到達目標
- 基本的な介護を実践するために最低限必要な知識・技術を理解できる。
- 介護の実践については、正しい知識とアセスメント結果に基づく適切な介護技術の適用が必要であることを理解できる。
- 自立の助長と重度化防止・遅延化のために、介護を必要とする人の潜在能力を引き出し、活用・発揮させるという視点が大切であることを理解できる。
- 利用者ができるだけなじみのある環境で日常的な生活を送れるようにするために、利用者一人ひとりに対する生活状況の的確な把握が必要であることを理解できる。
- 他者の生活観及び生活の営み方への共感、相手の立場に立って考えるという姿勢を持つことの大切さについて理解できる。
- 自立支援に資するサービスを多職種と協働して総合的、計画的に提供できる能力を身につけることが、自らの将来の到達目標であることを理解できる。
- 利用者本位のサービスを提供するため、チームアプローチの重要性とその一員として業務に従事する際の役割、責務等を理解できる。
- 利用者、家族、多職種との円滑なコミュニケーションのとり方の基本を理解できる。
- 的確な知識・記述の大切さを理解できる。
- 人権擁護の視点、職業倫理の基本を理解できる。
- 介護に関する社会保障の制度、施策、サービス利用の流れについての概要を理解できる。
これらの到達目標が達成できているかを、最終的に修了試験で評価することになります。
研修の受講対象者
訪問介護、在宅介護、施設介護問わず、介護の仕事をしようとする人を対象にしています。
研修受講に要件などはなく、誰でも受けることができます。
研修の実施者
介護職員初任者研修の実施者は、都道府県または都道府県知事が指定した事業所となっています。
普段から資格取得の講座を行っている会社や学校法人だけでなく、実際に施設を運営している社会福祉法人や医療法人なども実施をしています。
介護職員初任者研修の研修科目及び研修時間数
実務者研修は、全科目130時間の研修です。
研修科目 | 時間数 |
1.職務の理解 | 6時間 |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
3.介護の基本 | 6時間 |
4.介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
6.老化の理解 | 6時間 |
7.認知症の理解 | 6時間 |
8.障害の理解 | 3時間 |
9.こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
10.振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
10の研修科目について、講義と演習を一体的に実施することになっています。
介護職員初任者研修はどこで受けられる?取得する方法
では、実際にこの研修はどこで受けられるのでしょうか?
資格を取得する方法を具体的に見ていきましょう。
どこで受けられる?
介護職員初任者研修の実施者は、都道府県または都道府県知事が指定した事業所となっています。
各都道府県のホームページで、研修の開催日程の案内がされています。
お住まいの都道府県のホームページを確認してみてください。
上でも記載をしましたが、実際に施設を運営している社会福祉法人や医療法人がコースを開講しているケースも多いです。
働いてみたいという施設がすでにあるようでしたら、そこの法人がコースを開講しているのか確認してみるのもいいでしょう。
資格を取得するには?
介護職員初任者研修の資格を取得するには、実施者が開催している130時間の全講座を受講し、全過程修了後に実施される修了評価に合格することが条件になります。
冒頭でも記載したとおり、最低限の知識と技術を修得する研修ですので、通信講座だけで取得はできませんので注意が必要です。
実技演習は、全130時間に対し、最低90時間行うように決められています。
以下のように、通信形式の上限時間が各科目で設定されています。
研修科目 | 通信形式で実施できる上限時間 | 合計時間 |
1.職務の理解 | 0時間 | 6時間 |
2.介護における尊厳の保持・自立支援 | 7.5時間 | 9時間 |
3.介護の基本 | 3時間 | 6時間 |
4.介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 7.5時間 | 9時間 |
5.介護におけるコミュニケーション技術 | 3時間 | 6時間 |
6.老化の理解 | 3時間 | 6時間 |
7.認知症の理解 | 3時間 | 6時間 |
8.障害の理解 | 1.5時間 | 3時間 |
9.こころとからだのしくみと生活支援技術 | 12時間 | 75時間 |
10.振り返り | 0時間 | 4時間 |
合計 | 40.5時間 | 130時間 |
知識と技術の両方の修得を目標としている研修だけあって、7割弱が対面での授業となっています。
働きながら資格がとれるように配慮がされている研修ですので、上で示した130時間の研修科目を、通信講座+通学講座で組み合わせて受講するパターンの講座がほとんどです。
東京都の場合は、通学形式9会場、通信形式142会場となっています。
圧倒的に通信講座+通学講座を組み合わせて開講している講座が多いです。
ただし、7割弱が対面での授業です。
そのため、通学講座も「夜間コース」や「土日コース」など様々な設定がされています。
仕事との両立をしやすい場所や開講スケジュール、欠席した場合の振替対応などをポイントに受講スクールを選ぶことで、働きながらでも十分に資格を取得できます。
介護職員初任者研修の合格率は?
介護職員初任者研修の資格を取得するには、修了評価試験に合格することが条件なっています。
そこで、皆さんが心配なのは、試験の難易度ではないでしょうか。
介護職員初任者研修の評価試験はそれほど難しい試験ではありません。
合格ラインは100点中70点以上ですが、講座の内容を復習すれば合格できる基礎的な質問です。
また、仮に不合格となっても追試がありますので、あきらめなければほぼ100%合格できる試験です。
介護職員初任者研修受講のメリットとできること
介護職員初任者研修は、介護分野において制度的に位置づけられた研修です。
介護の仕事は無資格からでも始められますが、高齢化に伴い、利用者も重度化していて、無資格では仕事の内容や利用者の状況がわからず、躊躇される方も多いようです。
その分、最低限とはいえ知識と技術を修得できる「介護職員初任者研修」は介護仕事のスタートとなる資格でもあります。
最後に、介護職員初任者研修の受講メリットと修了するとできることを見ていきます。
介護職員初任者研修受講のメリット
未経験でも就職できる
介護の現場は未経験でも就職はできますが、施設などではなかなかゼロから技術を教えてくれる余裕がない施設も多いです。
その分、経験はなくても、一通りの知識・技術を身につけている方は現場にも入りやすく、仕事にもなれるまでの時間もかからないため、採用されやすくなります。
未経験で介護の仕事をしてみたいという方は、ぜひ取得しておくといいでしょう。
資格手当などにより給料がアップする
給料や資格手当については、就職先によりますが、多くの施設で無資格者より介護職員初任者研修修了者のほうが給料が高く支給されています。
調査の平均勤続年数には差がありますが、介護職員初任者研修修了者のほうが無資格者より給料が高いという調査結果が出ています。
入門的な位置づけの研修にもなりますので、できれば就職の前に取得をし、条件面でプラスになるようにしましょう。
訪問介護員(ホームヘルパー)として働くことができる
介護の仕事は無資格で始められることができますが、訪問介護に関しては、原則一人で利用者の自宅を訪問し、業務を行うことになるため、介護職員初任者研修以上の資格が必要となっています。
厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者のいる世帯のうち、半数が高齢者のみの世帯となるなど、これからますます在宅での介護の需要は高まります。
地域包括ケアの推進という流れにもなっていますので、この資格を持っておくと、就職先の選択肢も広がります。
実務者研修受講の内容が、一部免除ができる
実務者研修のカリキュラムは、無資格者が受講すると450時間の研修ですが、初任者研修で受講した科目を130時間免除することができます。
また、受講費用もその分安くおさえることができます。
介護職員初任者研修、実務者研修どちらも受講資格がないため無資格で受講することができる研修ですが、実務者研修は6カ月以上、450時間という負担のかかる研修です。
介護未経験の方には、少し負担になるかもしれません。
厚生労働省の報告書にもあるように、キャリアパスという位置づけで、まずは「介護職員初任者研修」からスタートし、実務者研修に移るほうが、負担も少ないです。
まとめ
今回は、「介護職員初任者研修」について解説をしました。
高齢化に伴い、介護をする人材を少しでも増やし、そのキャリアを国としてもしっかりと支援をして育成したいという流れの中で、スタートラインともいえる資格です。
今後の働き方の中で、自分がどのようにキャリアアップをし、その中で資格を取得していくのか。
長期的にはまだ考えられないという方も、ぜひこの資格は取得しておく価値のある資格だと言えますよ。
\介護のキャリアをここからスタート/