介護福祉士の国家試験は、13科目から出題されます。

介護保険制度などの制度的な知識から、疾病、医療的ケア、コミュニケーション技術まで、出題範囲は幅広いものです。

時間をかけて確実に知識を身につける勉強方法もありますが、できるだけ効率的に勉強したいですよね。

しかし、介護福祉士の試験勉強は、やればやるほど混乱してしまう人がいます。

それは、試験の特徴を理解しないまま、知識を詰め込もうとしていることが原因かもしれません。

そんなことにならないためにも、勉強を始める前に、混乱しやすい「3つの落とし穴」をおさえておきましょう。

事前に知っておくだけでも、効率的な試験勉強につながります。

この記事でわかること
  • 介護福祉士試験の出題形式で注意したいこと
  • 制度改正によって過去問の正答が変わる可能性
  • 似ている制度を混同しないための勉強方法

落とし穴①|設問形式

介護福祉士試験が難しいと感じる理由の一つに、出題形式があります。

介護福祉士国家試験は、125問の五肢択一を基本とした試験です。

合格基準は総得点の60%程度を基準に問題の難易度によって補正されるため、毎回同じ点数ではありません。

また、11科目群すべてで得点することも必要です。

そのため、得意な科目だけを勉強するのではなく、幅広い科目で得点できるようにすることが大切です。

介護福祉士試験で問われる力とは?

介護福祉士試験では、専門的な知識だけでなく、その知識を介護現場でどのように活用するかが問われます。

例えば、マズローの欲求階層説を勉強するとき、5つの欲求を覚えることは基本です。

しかし、介護福祉士試験では、それだけでなく、利用者の言動や生活状況から、どのような欲求があるのかを考える力も必要になります。

今回は、分野も近い「看護師試験」と比較をしてみましょう。

利用者が何を望んでいるのか、どのような支援が必要なのか。

こうした場面では、知識を覚えているだけでは答えを選べないことがあります。

介護福祉士試験では、知識を覚えることに加えて、具体的な場面で活用できるようにすることが重要です。

「最も適切なもの」を選ぶ問題に注意

介護福祉士試験の過去問を解くと、「最も適切なもの」を選ぶ問題が多いことに気づくと思います。

「正しいもの」と「最も適切なもの」は、同じようで少し違います。

「正しいもの」を選ぶ問題では、選択肢の内容が正しいかどうかを判断します。

一方、「最も適切なもの」を選ぶ問題では、複数の選択肢の中から、利用者の状況に最も合った対応を考える必要があります。

例えば、同じ年齢で同じ要介護度、同じ疾病の利用者が2人いたとしましょう。

それでも、本人の希望や生活環境、心身の状態が異なれば、必要な支援も変わります。

介護福祉士試験では、こうした個別性を踏まえた判断が求められます。

選択肢に書かれている内容が一般的に正しくても、その事例に最も適切な対応とは限りません。

ここが、試験勉強で混乱しやすいポイントです。

出題形式に慣れることが合格につながる

QUESTION STYLE

第38回介護福祉士国家試験の出題形式

全125問を、設問の聞かれ方ごとに整理しました。
第38回は「最も適切なもの」を選ぶ問題が中心です。

第38回の総問題数 125問
最新の出題形式を反映
最も適切なもの 状況判断・事例問題で最も多い聞かれ方
100問 80.0%
適切なもの 制度・知識・説明の理解を問う問題
19問 15.2%
正しいもの 法制度・用語・身体の知識などの確認問題
6問 4.8%

ポイント

第38回では、125問中100問(80.0%)が 「最も適切なもの」を選ぶ問題でした。
つまり、知識をそのまま覚えるだけではなく、 事例や場面の中で「いちばん合っている答え」を選ぶ力が重要です。

※第38回介護福祉士国家試験(全125問)を、設問末尾の表現ごとに整理して作成。
※「最も適切なもの」「適切なもの」「正しいもの」の3分類で集計しています。

過去問を解くときは、正解したかどうかだけでなく、問題文の指示にも注目してみましょう。

特に確認したいのは、次の3点です。

  1. 「正しいもの」「適切なもの」「最も適切なもの」など、何を選ぶ問題なのか。
  2. 利用者の希望や心身の状態など、判断の根拠になる情報は何か。
  3. 正解以外の選択肢は、なぜその事例に適切ではないのか。

過去問の正解番号だけを覚えても、問題の条件が変われば答えられなくなってしまいます。

正解した理由と、ほかの選択肢が適切ではない理由まで確認することが大切です。

出題形式に慣れ、問題文の条件を丁寧に読み取ることが、得点につながります。

落とし穴②|制度改正

落とし穴の2つ目は、制度改正です。

介護保険制度をはじめ、介護に関する法律や制度は、社会の変化や課題に対応するために見直されています。

例えば、介護保険制度では、これまでに地域包括ケアシステムの推進や介護予防の充実、地域支援事業の見直しなどが行われてきました。

また、介護保険制度だけでなく、障害福祉や高齢者福祉、医療など、関連する制度にも改正があります。

これが、試験勉強で混乱する原因の一つになります。

介護に関する制度は変わっていく

SYSTEM REFORM HISTORY

介護保険制度の主な改正

試験対策で押さえたい改正のポイント

改正年 主な改正内容
2005年 2006年施行等
  • 介護予防給付の創設
  • 地域包括支援センターの創設
  • 地域密着型サービスの創設
2008年 2009年施行
  • 介護サービス事業者の法令遵守体制の整備
  • 事業の休止・廃止時の利用者保護強化
2011年 2012年施行等
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の創設
  • 複合型サービスの創設
  • 介護職員等による喀痰吸引等の制度化
2014年 2015年施行等
  • 要支援者の訪問・通所介護を総合事業へ移行
  • 特養の新規入所を原則要介護3以上に
  • 一定以上所得者の自己負担を2割に
2017年 2018年施行等
  • 介護医療院の創設
  • 特に所得の高い利用者の自己負担を3割に
  • 自立支援・重度化防止の取組を推進
2020年 2021年施行等
  • 地域の包括的な支援体制の整備
  • 医療・介護のデータ基盤整備
2023年 2024年施行等
  • 介護情報基盤の整備
  • 介護事業者の経営情報の報告・分析制度の創設

※主な改正内容を抜粋しています。改正年と施行年は異なり、施行時期は改正事項によって異なります。
※2023年改正に伴う介護情報基盤の整備は、段階的に進められています。

介護保険制度の改正を振り返ると、少しずつ内容が変わってきたことがわかります。

新しいサービスが創設されたり、サービスの対象者や利用条件が変更されたりすることもあります。

介護現場で働いている人にとっては、制度が変わる前の知識と、現在の制度が混在してしまうこともあるでしょう。

特に、以前から介護の仕事に携わっている人は、自分が覚えている制度が現在も同じ内容なのかを確認することが大切です。

ただし、すべての制度改正を細かく覚える必要はありません。

まずは、現在の制度の仕組みを理解しましょう。

そのうえで、過去問に登場した制度のうち、現在と内容が異なるものを整理していくと効率的です。

古い過去問を解くときの注意点

介護福祉士試験の対策では、過去問を繰り返し解くことが重要です。

しかし、制度に関する問題には注意が必要です。

過去に正しいとされていた選択肢が、制度改正によって現在では正しくない場合もあります。

そのため、過去問を解くときは、次のことを意識しましょう。

  • 制度や法律に関する問題は、現在の内容と照らし合わせる。
  • 数字や対象者、サービスの名称などは変更されていないか確認する。
  • 古い過去問の正答を、そのまま暗記しない。

制度改正を追いかけることは大変ですが、国家試験では現行制度を理解することが基本です。

過去問は出題傾向を知るために活用し、制度の知識は新しい情報で確認する。

この2つを意識することが大切です。

落とし穴③|分野ごとに微妙に違う制度

介護福祉士の試験では、高齢者福祉の制度と障害福祉の制度など、似ている仕組みが登場します。

また、障害の分野一つをとっても、障害児と障害者では関係する法律やサービスが異なります。

一見すると同じような制度でも、対象者や利用条件、実施主体などに違いがあるのです。

こうした細かな違いが、試験勉強で混乱しやすいポイントになります。

似ている制度を混同しない

例えば、介護保険制度と障害福祉制度は、どちらも日常生活を支えるための制度ですが、根拠となる法律や対象者、サービスの仕組みが異なります。

また、障害児に対する支援では、児童福祉法に基づくサービスもあります。

制度の名前やサービス内容が似ているため、別の制度の知識と混同してしまうことがあります。

そのため、制度を覚えるときは、サービスの名前だけでなく、「誰を対象に、どの法律に基づいて、どのような支援を行うのか」を整理することが大切です。

制度の違いは比較して覚える

似ている制度を勉強するときは、それぞれを別々に暗記するよりも、比較して整理すると違いがわかりやすくなります。

例えば、次のような項目で整理してみましょう。

  • 根拠となる法律
  • 主な対象者
  • 利用できるサービス
  • 申請先や実施主体
  • 利用条件や費用負担

実際に、介護保険法と障害者総合支援法を比較してみましょう。

SYSTEM COMPARISON

介護保険法と障害者総合支援法の違い

試験で混同しやすいポイントを比較

比較項目 介護保険法 障害者総合支援法
対象者 65歳以上の人、40~64歳の医療保険加入者 (40~64歳の人は特定疾病による要介護・要支援状態が給付要件) 身体・知的・精神障害(発達障害を含む)のある人、 難病等の対象者など
認定・区分 要支援1・2
要介護1~5
障害支援区分1~6
(サービスによって区分認定の要否が異なる)
計画作成の主な専門職 介護支援専門員
(ケアマネジャー)
相談支援専門員
サービス例 訪問介護
通所介護
福祉用具貸与
居宅介護
生活介護
就労継続支援
利用者負担 原則1~3割
(所得等による)
原則1割
所得に応じた月額負担上限あり

試験対策のポイント

介護保険と障害福祉では、サービスの名前が似ていても、 根拠法や認定方法、計画を作成する専門職が異なります。
特に、65歳になったら障害福祉サービスが 必ず終了するわけではないことも 押さえておきましょう。

※制度の主な違いを整理した表です。 対象者・認定方法・利用者負担には、 サービスごとの条件や例外があります。

このように、似ている制度でも、対象者やサービスの仕組みなどに違いがあります。

過去問で間違えたときは、正しい制度を確認するだけでなく、何と混同したのかを考えてみてください。

「対象年齢を間違えた」「サービスの根拠法を勘違いしていた」など、間違えた理由がわかれば、次の問題にも対応しやすくなります。

似ている制度は、共通点よりも違いに注目することがポイントです。

細かい制度を一度に覚えようとせず、過去問に登場した内容から少しずつ整理していきましょう。

まとめ

今回は、介護福祉士試験の勉強で混乱しやすい「3つの落とし穴」を紹介しました。

01
出題形式

知識を暗記するだけでなく、問題文の条件を読み取り、 最も適切な選択肢を判断する練習をしましょう。

02
制度改正

古い過去問を解くときは、法律や制度の内容が 現在と異なっていないか確認しましょう。

03
似ている制度

対象者や根拠法、サービスの違いを比較しながら 覚えましょう。

試験範囲が広いからこそ、すべてを同じように暗記しようとするのではなく、問題の特徴を理解することが重要です。

過去問を解きながら、正解した理由や間違えた原因を確認していきましょう。

理解が不十分だった問題を繰り返し復習することで、知識を得点につなげやすくなります。

まずは、過去問に挑戦してみてください。

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