- 介護福祉士試験の難易度
- 勉強の始め方
実際に、介護福祉士試験受験対策で受験生を教えている私が説明していきます。
介護福祉士って?
まずは、「介護福祉士」とはどんな資格なのかしっかりと理解しましょう。
介護福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法を根拠とする介護に関する日本で唯一の国家資格です。
高齢者や障害者など、日常生活を営むのに支障がある人を介護したり、介護者へ指導を行う専門職です。
「介護士」という言葉は介護の仕事をする人全体を表す呼び方で、介護の現場で仕事をしていれば、介護士と名乗ることができます。
しかし、「介護福祉士」は介護福祉士国家試験に合格し、登録をした人だけが名乗ることができる名称です。
介護福祉士試験の難易度
介護福祉士試験の仕組みや難易度について、説明していきます。
受験するには条件がある資格(受験資格)
介護福祉士を受験するには、次のいずれかのルート・要件を満たす必要があります。
試験を受けたいと思っても、誰でも試験を受けられる資格ではありません。
試験については、①筆記試験、②実技試験の2部構成ですが、平成28年度(第29回)試験から、受験要件に「実務者研修修了」が加わったことで、実務経験が免除となりました。
実際に実技試験を受験する人は、「福祉系高校ルート」と「経済連携協定(EPA)ルート」の一部の人だけになっています。
筆記試験の難易度
筆記試験は、12科目+総合問題で、合計125問のマークシート式です。
1問1点で採点され、総得点の60%程度を基準として、課題の難易度で補正した点数以上の得点がとれた人が合格となります。
その年の試験の難易度で合格ラインは毎年違いますが、だいたい80点以上取れれば安全です。
ただし、11の科目群すべてに得点がなければいけません。
言いかえれば、それ以外は得意なところで得点をかせげばOKです。
過去5年の筆記試験の合格ライン(得点)と得点率をまとめました。
5年のうち、4年は得点率が60%を超えています。第34回の合格率は63%。
安心して合格ラインを超えられるように65%=81点を目標にしましょう。
実技試験の難易度
実技試験は、名前の通り実際に与えられた課題に対して実技を行う試験です。
筆記試験が合格ラインに達しない場合は、実技試験を受験することはできません。
与えられた課題に対し、1人「5分以内」で実技が行われます。
試験の課題は、当日の控室で発表。本番までの10分程度の短い時間で、要介護者の名前や身体の状況を覚え、5分以内でどんな実技をするのか考えます。
試験は、課題で与えられた要介護者役のモデルに対し、課題で与えられた要介護者の症状に適した介助ができているか、2名の審査員がチェックします。
実技試験のポイントは、大きく3つ。
介護の原則である、①安全・安楽、②自立支援、③個人の尊厳。
これら介護の3原則に基づいた介護ができているかという点です。
こちらも、筆記試験と同様に、課題の総得点の60%程度を基準として、課題の難易度で補正した点数以上の得点者が合格となります。
実技試験は一定の研修を受けることで、免除という選択もできます。
介護福祉士国家試験の合格に必要な勉強時間
介護福祉士試験合格者の勉強時間に関する調査等はありませんでした。
しかし、試験対策を行っている講座が、3か月~6か月で設定されていることが多いので、目安の1つがこれくらい。
平成28年総務省の調査によると、社会人の平均勉強時間は平均160分と言われていますので、毎日コツコツと2~3時間の勉強時間を確保できれば、最短で3か月。
半分くらいの勉強量で、6か月。
おおよそ、平均250時間の勉強が必要です。
介護福祉士試験は、受験資格がありますので知識ゼロからのスタートの人はいないと思います。
日々の経験を予備知識とすれば、200~300時間での合格も可能です。
実務経験ルートでの受験の場合、仕事をしながらの(特に、施設で働いている人は夜勤などもあり大変ですよね)受験ですので、試験勉強にはできるだけ時間を割きたくないでしょう。
効率的な勉強を意識して、最速での合格を目指しましょう。
受験生の実体験|勉強で大変だったところ
実際受験生を教える中で、大変だと感じているところを紹介します。
この記事を読んでいるあなたが知りたいのは、ここですよね。
チャレンジしたいけど、無駄になったらどうしよう…
途中で挫折したらどうしよう…
他の受験生がどこでつまづきそうだったのか、勉強の大変さを3つのポイントに絞ってお伝えします。
①スケジュールの管理
介護福祉士試験の筆記試験は、12科目と範囲が広く、試験は年に1回しか実施されないため、スケジュール管理が大変です。
計画を立てず、ただやみくもに勉強をスタートしてしまうと途中で挫折します。
スタートするときは、誰もが一番やる気がある時期。
でも、実際はやればやるほど混乱しやすい試験でもあります。
混乱せず、1番効率的に学習を進めるためには、通信講座などの外部機関(第三者)の力を借りることです。
3~6か月の期間で、しっかりとカリキュラムにそって勉強を進められるようになっています。
②体調管理
上でも触れましたが、試験は年1回しか実施されません。
また、実施は毎年1月末の日曜日となっています。
介護の現場で仕事をしている人はよくわかりますが、この時期は感染症が拡大しやすいです。
シフト制の勤務をしている人は、試験の日に向けて集中力を高められるよう管理も必要です。
試験中眠くなったりしないように、体内時計の管理もしましょう。
③実技試験の攻略法
筆記試験はいかに効率よく勉強できるかで攻略できますが、実技試験に関してはそうはいきません。
「実技試験の難易度」でも触れましたが、課題はその場で渡され、試験委員が見ている前で指定された時間内で正解とされる実技をしなければなりません。
緊張してしまう…
パニックになって全然できなかった…
メンタルで普段の実力が発揮できない人もいれば、最近では、高齢者介護だけでなく、障害者など多様な利用者の状況が設定されます。
普段、あなたが接している利用者とは違う設定の事例が出されることもあります。
集中したいという方は、ぜひ最初から免除で受けられるようにするといいです。
実技試験に関しては、今ではほとんどのルートで免除対象となっていますので、対策をしているところも少なくなっています。
筆記試験に集中するためにも、実技試験は免除の方向で考えましょう。
合格率は70%前後で推移
介護福祉士試験の筆記試験は、問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正することになっています。
また、試験科目11科目群すべてで得点が必要です。
125点満点の60%=75点程度が合格ラインになります。
そこに実技試験の合否もあわせた合格率の推移は以下の通り。
ここ5年は、70%前後で推移しています。
10人中7人は合格しますので、自分の実力を発揮できれば、比較的難易度は低い試験といえます。
日本は2065年までは高齢化が進むと推計されていますので、取得しておいて損はない資格ですね。
資格偏差値ランキング【介護の他の資格と比較】
資格の偏差値をランキング形式で紹介している「資格の取り方」を参考に、介護福祉士と他の介護のジャンルの資格の難易度を比べてみましょう。
介護ジャンルの資格との比較
資格名 | 偏差値 | 難易度 | 備考 |
ケアマネジャー(介護支援専門員) | 55 | 普通 | 公的資格 |
介護福祉士 | 45 | 簡単 | 公的資格 |
介護事務管理士 | 45 | 簡単 | 民間資格 |
ケアクラーク | 44 | 簡単 | 民間資格 |
介護保険事務管理士 | 43 | 簡単 | 民間資格 |
認知症ケア専門士 | 42 | 簡単 | 民間資格 |
認知症ライフパートナー | 37~44 | 超簡単~簡単 | 民間資格 |
介護食士 | 37~39 | 超簡単 | 民間資格 |
認知症ケア指導管理士(初級) | 37 | 超簡単 | 民間資格 |
介護職員初任者研修 | 35 | 超簡単 | 民間資格 |
参考:資格の取り方
介護福祉士の偏差値は45。
介護のジャンルの他の資格と比較すると、介護支援専門員(ケアマネジャー)に続いた難易度です。
他の国家資格との比較
では、次は他の国家資格との偏差値を比べてみましょう。
資格名 | 偏差値 | 難易度 | ジャンル |
医師 | 74 | 超難関 | 医療 |
管理栄養士 | 62 | 難関 | 食品 |
社会福祉士 | 57 | 普通 | 福祉 |
精神保健福祉士 | 50 | 普通 | 福祉 |
介護福祉士 | 45 | 簡単 | 介護 |
理学療法士 | 43 | 簡単 | 福祉 |
作業療法士 | 41 | 簡単 | 福祉 |
看護師 | 41 | 簡単 | 医療 |
保健師 | 41 | 簡単 | 医療 |
参考:資格の取り方
試験によって、出題数も全く異なりますので、一概には言えませんが、同じ医療・介護分野に関係する他の国家資格の中では真ん中ぐらいの偏差値です。
受験資格として、現場での実務経験が求められますので、働きながらでの勉強にはなりますが、受験資格別に見ても、9割弱の人が、働きながら勉強をした人たちです。
また、受験者の約半分(46.2%)が40代以上です。
国家試験というとハードルが高く感じますが、40代以降でも十分に挑戦できる国家資格です。
最も効率的な勉強法は、実務者研修(通信講座)の活用
平成28年度以降、実務経験ルートの受験要件に、450時間の実務者研修が加わりました。
実務者研修のカリキュラムは、介護福祉士試験の試験科目と同じですので、土台となる知識はここでつけるといいでしょう。
実務者研修は、いつからでも受けられます。
実務者研修は、試験を受ける年度の3月31日までに研修を修了すればいいことになっていますが、筆記試験の基礎的知識をつけるためにも、試験前に修了することをおすすめします。
実務者研修で身につけた知識を忘れないうちに活用し、通信講座+独学の形が一番効率のいい勉強です。
できれば、受験する年度の10月頃までに修了するといいです。
残り3か月で基礎知識を試験用の応用知識にできるとより、効率よく試験につなげることができますよ。
\実務者研修の受講検討はこちらから/
以下の記事では、私がおすすめする独学のための参考書をまとめています。
ぜひ、ご覧ください。
よくある質問
介護福祉士試験について、よく聞かれる質問を紹介します。
「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正により、平成29年度(第30回)から、受験ルートに関わらず、筆記試験の合格が必要となりました。
しかし、「養成ルートで養成施設を令和8年度末までに卒業する方は、卒業後5年の間は、国家試験を受験しなくても、または、合格しなくても介護福祉士になることができます。
この間に国家試験に合格するか、卒業後5年間続けて介護等の業務に従事することで、5年経過後も介護福祉士の登録を継続することができます。
令和9年度以降に養成施設を卒業する方からは、国家試験に合格しなければ介護福祉士になることはできません。
介護保険制度には、サービスの質が一定以上保たれている事業所を評価するための加算として、「サービス提供強化加算」というものがあります。
これは、介護福祉士の資格を保持している人の配置割合で、加算が算定されます。
介護現場は、慢性的な人手不足であることもあり、未経験者でも採用してもらえますが、有資格者を集めにくいこともあり、現場経験だけでなく、資格を保持していると喜ばれます。
まとめ
今回は、介護福祉士試験の難易度を、様々な角度から紹介しました。
- 介護福祉士試験の合格率は、70%前後
- 資格偏差値は、簡単レベル。それほど難しい試験ではない。
- 受験資格があるため、勉強を計画的に始める必要がある
- 受験資格にもなる研修で土台を固めて、あとは試験向けに応用するのみ
9割近くの人が働きながら試験勉強をしています。
自分だけが大変な思いをしているのではありません。
人間のやる気は、「やろう」を思った日=今この記事をここまで読んでいる今が一番高いため、勉強をスタートする日には一番いい日です。
ぜひ、試験合格に向けた第一歩を踏み出してください。